絵本のなる木

絵本・子育て・ボランティア体験記

震災ボランティア体験記「ドロかき日記5-上」

 

はじめに


このブログは、数年前の震災ボランティア体験記です。
私にとっては初めてのボランティアの日々でした。
当時コツコツと書き貯めていたもので、どこかで発表してみてもいいかな、と思い、今更ながらに掲載してみました。
あれからも自然災害に終わりはなく、今日もどこかでボランティアとして汗を流している方々がいることでしょう。
でも、やったことのない人にとっては、ボランティアって未知の世界。
この体験記を読んで、これから始めてみようという方にも、受け入れる側にとっても、少しでもボランティアが身近なものになればいいな、と思っています。

「ドロかき日記」もこれで最後。
あの漁師さんたちはどうしているだろうか。
あのボランティアさんたちはどうしているだろうか。
あの銭湯はまだあるのだろうか。
3.11が近づくにつれ、思い出すことが多くなってきます。
願わくば、今もきっと、皆さんがそれぞれの持ち場でご活躍されていることを、思って止みません。


参加団体

東日本大震災生活支援協会(LSA)

ボランティア期間

2012年10月12日~14日

2012年10月12日PM10:10自宅出発

久しぶりの泊りがけのボランティア。

ずしっとした登山用リュックの重みが懐かしい。

実に10ヶ月ぶりである。

今回参加する団体は初めてということもあり、相変わらずドキドキの船出である(かつて自分の参加した団体は活動の縮小、もしくは休止に入ってしまったところもあり、なかなか一つの団体で継続した参加をすることは難しい現状がある)。

PM11:15品川駅集合。

総勢40名が集まり、二台のバスに分かれて乗り込む。

自分は2号車。…と、ちょっとビックリ。

マイクロバスである。

ちょっとした移動でシャトルバスなどによく使われている、あのマイクロバスである。

これに20人ぎゅうぎゅうで東北までか…いや、贅沢は言っていられない。

どこのボランティア団体も資金繰りに大変なのだ。

バスの側面に書かれた「ニッポンレンタカー」のロゴが眩しいではないか、とわけのわからない納得の仕方でバスに乗り込む。

23:45品川駅前を出発。

ぎゅうぎゅう詰めの車内であるが、まだ皆さん見知らぬ者同士なので、一部の友達同士らしき学生をのぞけば無言である。

自分も今までの経験上、夜のバスは寝るに限るとわかっているので、そそくさと就寝準備に入る。

今回は新アイテム、ダイソーのネックピロ―を試してみる。

ぷうっと膨らませて首にはめると、なんと心地よいことか。

これはいい買い物をした、と就寝。

そこから二時間おきのトイレ休憩以外、殆ど寝れたのには我ながら驚いた。

ドロかき日記のセオリーを覆す快挙である。

ネックピロ―おそるべし。

10月13日早朝@宮城県

 日は変わり、10月13日早朝。

気がつけば辺りは白み始め、いつのまにか宮城県入りしている。

仮設でプレハブのセブンイレブンに到着し、朝食買い出しの為下車。

日がまぶしい。

目を凝らせば、そこには数か月前と変わらない景色が広がっている。

津波に呑まれた後の街並み。

ガレキは大分無くなったが、家の流された後に、新しい家は建っていない。

妙に見通しがいいのは、建物がないからだ。

コンクリの土台のみが、そこに家のあった証拠として残っている。

テレビなどで一見すると復興が進んでいるような印象を受けるが、これが東北の現状である。

下車した他の方々も、言葉無く、ただただ辺りを見つめている。

バスはすぐ近くの「防災対策庁舎」に移動。

f:id:hightree:20200101221431p:plain

津波に呑まれても鉄骨と看板は流されずに残った建物で、この地域の慰霊の地として解体せずに残してあるらしい。

たくさんの千羽鶴や木彫りの仏様などが手向けられ、早朝にも関わらず、手を合わせる方が後を絶たない。

自分達も各々手を合わせさせていただく。

その後、バスは更に海の方へと進んでいく。

だんだんと

「がんばっぺ宮城!」

「がんばろう日本」

などの看板が増えてくる。

関東ではついぞ見られなくなってしまった光景だ。

途中のガソリンスタンドで

「津波のバカ!物は流れても、心は流れません」

と書かれた看板を目にした時には、正直胸がつまってしまった。

作業開始@韮の浜

8:30宮城県南三陸町、韮(にら)の浜到着。

ここが今日の作業場所だ。

小さな港にいくつかの集落と田畑の広がる地域だったそうだが、田畑は見る影もなく、家も丘の上以外は流されてしまっている。

ガレキは殆ど撤去されたが、屋根の瓦やガラスなど、細かいものはまだ残っている。

自分たちの作業はそういった、手で運ぶしかないガレキの撤去作業である。

田畑を再開させるにしても、家を建て直すにしても、どうしても必要な作業だそうだ。

スタッフさんの説明を受け、作業開始。

作業内容は極めて簡単。

辺りに散らばっている細かいガレキを集め、カゴや一輪車でガレキ置き場まで運ぶのみ。

自然、女性がガレキを集め、男性が力の要る一輪車を押すことになる。

自分もひたすらに一輪車でガレキ置き場とガレキ集めの場を往復。

10分で息が上がる。瓦やら木材やらガラスやらいろいろ積むのだが、どれも結構な重さだ。特に瓦はかなりの重量級である。

よく日本家屋はこれをてっぺんに敷きつめてもつぶれないな、と変に感心してしまう。

加えて道というものが無く、短いが急なアップダウンの坂あり、でこぼこありと、かなりのオフロードぶりである。

初めは張り切ってしゃかしゃかと往復し

ていたが、こんなペースでやってたら一時間も持たないな、とペースダウン。

f:id:hightree:20200101221458p:plain

「疲れたら休んでくださいね」とスタッフさんも周囲に声をかけている。

無理をしないのがボランティアの精神だ。

12:00昼食。

メンバー全員で海まで歩いていき、お弁当を広げる。ぐるっと辺りを見渡してみる。

不謹慎かもしれないが、やはり東北の海は美しい。

い緑色の海。

それに雄大な山々。

この地域独特の地形により、海のすぐ

向こうには山がそびえ、海に山、そして空の青が何とも言えずきれいだ。

やっぱり自分は東北が好きだなぁ、とお弁当をパクパクしながらしみじみと思う。

ふと気がつけば完食。

お弁当に嫌いな物が一つも入っていなかったことに満足しながら「ごちそうさま」とフタを閉じる。お弁当は配給でした。

戻る途中、すれ違う地元の軽トラックの中から会釈される。

自分もぺこりと頭を下げる。

ここらの方々はボランティアを見ると、必ず挨拶をしてくれる。

その姿が毎回胸にじんと来るのは、自分だけだろうか。

13:00作業再開。

ひたすら一輪車である。秋とはいえ太陽の照りつけは強く、体力を奪われる。しかし、坂を登る時は腰を落とし、足を前へ前へ出す等

大分コツをつかんできた。力の加減もわかってきて、でこぼこ道もお手のもの。そろそろ一輪車の使い手としては日本で指折りではないかと思う頃、作業終了である。

@第十八共徳丸~銭湯「亀の湯」

片づけをして16:00韮の浜出発。

気仙沼にある銭湯まで行くのだが、途中、津波に流された船がそのままになっている場所に立ち寄る。

f:id:hightree:20200101221527p:plain

ここにも千羽鶴が手向けられており、皆で手を合わせる。

船体には「第十八共徳丸」と書かれ、見上げるとそのままひっくり返ってしまいそうなほどの巨大な船だ。

陸に上がり、全身が丸見えの船体は、宇宙戦艦ヤマトの様相を呈している。

ざっと周りを見渡しても海が見えないのが恐ろしい。

こんなものが住宅地に流されてくることを誰が想像できるだろうか。

その大きさに、ただただ圧倒される光景である。

17:00銭湯「亀の湯」到着。

スタッフさん曰く、この銭湯も一階部分は津波に呑まれ、ご主人とおかみさんは一度は銭湯をたたもうとしたそうである。

しかし、お二人の人柄に自然とボランティアが集まって片づけが進み、寄付も集まったので銭湯を再開させることにしたのだそうだ。

暖簾(のれん)をくぐると、なんとも懐かしい、昭和の匂いを感じさせる佇まいが広がっている。

番台はもとより、ケロヨンの風呂桶、タイル張りの壁に描かれた雄大な山景色。

それは映画「おくりびと」いや、最近では「テルマエ・ロマエ」か?を彷彿させる。

素晴らしいなぁと湯船にどっぷりと浸かる。

考えてみれば、ボラに来てお風呂に入るのもお初であったが、こんなにステキな銭湯に入るのは、人生初である。

実にいい所に来たなぁ、としみじみと湯に浸かっていたいところだが、すぐにのぼせてしまいそうになるので早々と上がる。

湯船のお湯は、なかなか、いや、かなり熱かったりする。

着替えると、休憩所は既にあがった他のメンバーで賑わっている。

おかみさんはすぐに「ここ空いてるわよ」とニコニコと席を空けて自分を招き入れてくれる。

その後も「お茶飲む?」「お茶菓子あるからね、食べてね」など次から次へと声をかけてくれる。

新しくあがってきたお客さんにも「漬物食べてね、おばちゃんが漬けたのよ」となにかと世話を焼いている。

その雰囲気は、どことなく「おしゃべりクッキング」の上沼恵美子に似ている。

ボランティアが自然と集まったという話はわからないでもない。

帰り、ボラへのおかみさんなりの感謝の気持ちもあるのだろう。

わざわざ見送りに出てこられ、バスが見えなくなるまで手を振っている姿には、素直に感動した。

たった数十分の出会いでも、こんなに大事にしてくれる人がいるのだ。

PM6:30@気仙沼~みなみ交流センター

夕食の為、気仙沼の仮設の飲食店街へ。

この地に来たら寿司でしょう、と寿司屋に入るがどこも満席。

考えてみたら今日は土曜日である。

少し離れたところにもう一つ飲食店街の明かりが見えるので、数名で歩いて行くことにする。

まだ街灯は復旧しておらず、ちょっと歩くと暗闇の街になる。

建て直した水産加工施設などあるのだが、闇に呑まれて全体が見えない。

街灯のない街並みとは何とも異様で、まるで別の世界を歩いているような気分になる。

メンバーの皆さんもなにやら足早に歩く。

五分ほどで賑やかな飲食店街に到着。

灯りを見てこんなに気持ちが安堵することもそうそうないだろう。

さて、寿司や寿司屋…と探すがやはりどこも満席。

なんとか空いてるマグロ丼屋を見つけ、入店。

せっかくだから、とビールで乾杯する。

何となく身の上話になると、自分は学生だと思われていたようで、メンバーのおじさんに大いに驚かれる。

喜んでいいやら悲しんだ方がいいのやら、微妙な年頃だな。(当時32才でした)

このおじさんがなかなか愉快な方で、夜のボランティアのミーティング後に、皆でお酒を飲むことが何よりも楽しみなのだそうだ。

宿泊所への道すがら、コンビニに寄ると、本当にお酒やおつまみを買い込んでいる。

他のメンバーが缶ビール1本ぐらいしか買わないのを見て「みんなそれだけでいいの?」とさみしそうにしている姿には、一同声をあげて笑わせてもらった。

PM8:30岩手県一関市にある、みなみ交流センターに到着。

ここが今回の宿泊所だ。

よく学校の宿泊旅行などで使われているような施設で、大部屋に布団を敷いてみんなで雑魚寝といった具合だ。

今までのボランティアは寝袋生活だったので、どこであれ、布団で寝れるだけで夢のようである。

大人数で布団を敷き詰めて寝るなど修学旅行以来で、なんだかわくわくしてしまう。

PM9:00ボランティアミーティング

別の広間に集まり、ミーティング。

畳に長机を四角く並べ、ぐるっと座る。

まず、一人ずつボランティアへ来たきっかけと、今日の感想を述べていく。

話し終わったら皆で拍手。

f:id:hightree:20200101221553p:plain

聞いていると、いろいろな人がいるのでおもしろい。

卒論の為の学生さんや、定年後のおじさんに貨物船の船長さん。

元航空自衛隊のおじさんは、よくこの上空を飛び回っていたので東北に思い入れがあるそうだ。

阪神大震災で被災し、その恩返しのために来たという若者もいた。

途中、船長さんの話が長く、待ちきれずに酒好きのおじさんがお酒の栓を開け始めたのには、笑いをこらえるのに苦労し

た。

そうこうしているうちに自分の番である。

『初めてボランティアで東北へ来たのは去年の7月。

きっかけは、震災からずっと「何もしないでいいのかな」と悩んでいたこと。

ボラへ参加したら、気持ちが晴れたこと。

一度来てしまうと、東北のことが心から離れなくなってしまって、今日に至ること。

今日の感想は、やっぱり東北の景色はきれいだと思った、この景色の中で生まれ育った方々は、きっとまたこの地で暮らしたいと思っているはず。

自分たちが活動を続けることで、それはそれはとても地道な作業だが、その先に、そういった方々が元の暮らしを取り戻せる日が来るんじゃないだろうか。

ボランティア団体がどんどん活動を縮小・休止していく中で、LSAさんには、是非息の長い活動をしていただきたい。自分もまた参加するので』

と毎度のごとくたどたどしく述べる。

一応拍手をいただき、ホッとする。

その後は皆でご歓談。

お酒好きのおじさんは、皆に芋焼酎をふるまって回っている。

明日の朝は酔いざましにしじみの味噌汁買ってあげるから、としきりにお酒を勧めている。

すごいなぁ、とふと隣のおじさんを見ると、そのおじさんは既に缶ビールを3本空けている。

ここは呑んべえの集まりか、と面喰らうが、そこまで悪酔いする方もなく、22:30宴会(?)終了。

歯を磨き、明日の準備をして布団にもぐりこむ。

東北の秋の夜はなかなか冷え込む。

耳を澄ませば聞こえてくるのは、虫の音ではなくイビキ。

今回は一人ではなく、あちこちから聞こえてくる、イビキ合唱バージョンだ。

これはなかなか手ごわそうだなぁ、と頭から布団をかぶり、耳栓をする。

耳栓をすると、イビキだけクリアに聞こえてくるので参る。

長期戦を予想するが、ボランティア始まって以来の「布団」の心地よさがイビキに打ち勝ち、ほどなく入眠。

気持ちのいい目覚めは、すぐそこまで来ている。


「ドロかき日記5-下」に続く。。。